「結構降ってんなー」

外はどしゃ降りの雨だった。







2. 口づける






補習が終わったあと、部活が終わったあと、一緒に帰る。いつもの習慣。こうして付き合う前からずっと。

「ホントだ。朝はそんな降ってなかったのにね」

「止みそうにねーから、このまま帰っちゃうか」

「うん、そうだね」

二人揃って傘立てに手を伸ばしたときだった。

「・・・あれ?」

「ん?どした?ツナ」

「・・・傘がない」

「え、傘さしてきてたろ?朝」

「そう、なんだけど・・・。もしかして盗まれちゃったのかなぁ・・・」

今朝は寝坊してしまって急いでいたから、コンビニで買ったビニール傘をさして来たんだった。もしかしたら傘を忘れた誰かが、コンビニの傘だったらいいだろうと、ツナが使うより先にそれを使ってしまったのかもしれない。

「傘ぐらい持って来いってな」

そう言って山本は、彼によく似合う群青色の大きな傘を開く。

「相合傘とかしてみる?」

「へ?」

「帰ろう、ツナ」

ぐい、とツナの腕を引っ張って、自分の傘の中にツナを入れてやる。

「あ・・、」

「ツナんちまで送ってやっからさ」

「あ・・りがとう・・・」

一気に顔が熱くなっていくのを感じた。










外は、ザーッという音が正しいくらいの豪雨で、まるでバケツの水をそのままひっくり返したみたいだった。

「思ったんだけどさ、あんま傘さしてる意味ねーよなぁ」

二人で一つの傘の中へ入っているせいかお互い片方の肩が濡れていて、さらに地面から跳ね返った雨も制服のズボンを濡らしていた。

「そう、だね」

「俺さぁ、靴ん中も濡れてきたんだけど」

「あはは。俺も」

「てことでツナ、やっぱ変更」

「なにが?」

「俺んちで一回休憩挟みませんか?」

「うん。そうしてくれるとありがたい、かな」

もう二人ともほぼびしょ濡れで、こんな豪雨の中それ以上歩く気力も失せていた。なので、もう少し雨足が弱まるまでツナは山本家へお邪魔することにした。





ガラッ、と店の扉を開けて、これ以上濡れないようにツナを先に中へ入れてやる。それから傘を閉じて自分も中へ入った。

「お、ツナくんじゃねぇか。いらっしゃい」

「あ、お邪魔します」

「ただいまー」

「なんだ、おめーらずぶ濡れじゃねぇか。傘持ってったろ」

「傘とかもう関係ねーよな、ツナ」

「うん」

「わりーけど、親父、タオル持ってきてくんね?」

「おー、そうだな。ちょっと待ってろ」

そう言って山本の父である剛は店の奥へ入っていった。

「ツナ、大丈夫か?寒くねぇ?」

「うん、大丈夫」

そんなことを話しているうちに、剛がタオルを何枚か部屋から持ってきてくれた。



「ほれ、ツナくん」

「あ、ありがとうございます」

受け取った白いバスタオルはふわふわで、少し気持ちよかった。

「一応風呂沸かしてきてやったから、寒かったら入れ」

「サンキュー」

一通りそこで水気を拭って、部屋に上がることにした。

「ツナ、上がるぞ」

「あ・・」

「あぁそうだ、武」

「ん?」

「明日仕入れの日だからよ、今日は留守にするけど、いいか?」

「これから行くの?」

「いや、もうちょっとしてからだけどな」

「そっか、わかった」

「晩飯、ツナくんの分も作っとくから、ツナくんゆっくりしてってな」

「え、でも・・っ」

「いーって、ツナ」

「遠慮はいらねぇぞ?ツナくん」

父と息子を交互に見たあと少し考えて、「ありがとうございます!」とお言葉に甘えることにした。








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やっと二人の初えっち場所が決まりました。
2007.05.22
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