「あった!」

「えっ!?」

ある日いつもの公園で、あの子と一緒によつばのクローバーを探した。

「ほら!」

「わぁ・・!」

見つけたのは俺で。

「これ、やるよ」

「え、でもたけしくんが・・」

「いーって」

それをあの子にあげた。

「でも・・っ」

「おれとともだちのしるし、な!」

そんな言い訳と一緒に。

「・・ありがとうっ!」

それに、最高の笑顔を返してきたのは、





「・・・・ツナ・・・?」





ぱちり、そこで目が覚めた。
















7 夕焼け















あの日、仲直りをして、山本とツナはもう一度ともだちになった。今度は親友ではなく、ともだちから。

今にして思えば、お互い友達がどういうものなのかも親友の意味も知らずに、ただ"しんゆうごっこ"をしていただけなのかもしれない。

楽しければそれでいい。一緒にいられればそれでいい。そう思っていた。

けれどあの日、山本がツナを傷つけて、ツナが山本を傷つけて、そこでようやく気づいた。



お互いにとても大切で特別な存在だったこと。



ただやり方がわからないだけだった。意味を知らないだけだった。

ひどく不器用でとても遠回りをしてしまったけれど、今度はきっとうまくいく。

少しずつ知っていけばいい。二人なら、こわくない。













ひとつ大きなあくびをしたあと、ちらり、本棚の隅にあったそれを見つけて、山本はそれを手に取った。

「ツナ、これ見ていい?」

表紙には"アルバム"の文字。

「いいけど・・・。見てもなにもおもしろくないよ?」

「そんなことねーって」

はは、と笑って、山本はそれの表紙をめくった。



今日は国民の休日ということで、学校もなければ野球部の部活も補習もない。どうせ家にいても暇だったので、山本は笹川家にお邪魔していた。

勉強嫌いな二人が揃ったところで休日前に出された宿題なんかするわけもなく、ゲームをしたり漫画を読んだりくだらない話をしたり、どこへ行くでもなく部屋の中にこもってまったりと休日を満喫していた。



ツナは、山本がアルバムを見るのを気にすることもなく、新しくお菓子の封を開いて漫画を読み始めた。

アルバムの表紙をめくると、生まれて間もないツナが出てきた。

「うわ、ツナちっせぇのー」

「赤ちゃんのときなんだから、あたり前だろ」

少しだけ、む、としたような顔を返してきた。そういえば、ツナに"小さい"とかいう単語は禁句だった。

続いてページをめくると今度は幼稚園の入園式の写真が出てきた。隣には同じ顔をした女の子。

「やっぱそっくりなー」

笹川もかわいいけれど、俺にはどう見てもツナの方がかわいく見える。それはツナには言わないけれど。

ページをめくるたびに出てくる小さなツナに、自然と笑みが零れた。

「お、小学生になった」

入園式と同じように、今度は大きなランドセルを背負ったツナが、京子と一緒に手を繋いで映っていた。

「てかさ、なんでランドセル赤なの?」

服装はちゃんと男の子らしくネクタイを締めてズボンをはいているのに、なぜか背中に背負ったランドセルは隣の京子と同じ色。

「・・・父さんが、ツナには赤色の方が似合うからとか、わけわかんない理由付けて赤色買ってきたから」

「あはは。ツナの親父さんおもしろいのなー」

「笑い事じゃないよ!俺それでからかわれたんだから!そのせいで女の子にも間違われるしさ!」

「でも似合ってるよ」

「・・・・・・」

どうやら人生の汚点らしく、ツナは、ちらり、とその写真を見たあと、少しだけ口を尖らせてまた漫画を読み始めた。



ページをめくるたびにツナが大きくなっていく。

微笑みながらページをめくっていた山本の手が、突然止まり、ふ、と笑顔が消えた。

「?どしたの?山本」

ページをめくるたびにいちいち感想をくれていた山本が急に静かになったので、思わずツナは山本に視線を向けた。

「・・・・・・」

それには答えず、山本はただアルバムの中のツナをじっと食い入るように見ている。

平均より少し小さな身体、ふわふわの色素の薄い髪の毛、大きな瞳に小さな鼻と口。



どうして気づかなかったんだろう。



驚いた顔、困った顔、楽しそうな無邪気な笑顔。



どうして忘れてしまっていたんだろう。



毎日のように公園で遊んだあの子の名前は、





「・・・・・ツナ・・・?」





「?なに?」

あの大事な大事なともだちはこんなにも近くに。

「山本?」







そうだ、







あの子の名前は、











つなよし。








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ツナが赤いランドセルって萌えるとか思うのは私だけですか?
2007.04.27
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