4 ひとりぼっち 「はぁ・・・」 大きな溜め息をついて、ツナはごろんと寝返りを打った。 運がいいのか悪いのか、次の日も熱は続いた。 別に喉は痛くないし咳きも出ない。鼻の調子だって悪くないしくしゃみひとつ出ない。だけど風邪かもしれないから休みなさいと母は言ってくれた。 今までは学校へ行けないことがあんなにうれしかったというのに、今はどうしてだろう、なんだかものすごくつまらない。 授業が楽しいわけじゃない。友達がたくさん出来たわけじゃない。別に夢のように楽しい学校生活が待っているわけじゃないのに。 ただ、たった一人のしんゆうがそこにいるから。 友達なんか必要ないと思ってた。 そりゃあいなけりゃいないで色々大変な目に遭うこともあるけれど、忘れ物をしたら隣のクラスの姉に借りればいいしそれがダメなら二つ上に兄もいる。話し相手が欲しければ同じように兄弟のところへ行けばいいし、お昼ご飯を食べるのだって一人ででも大丈夫だ。 不自由なことなんてなにもない。 ひとりででも、ぜんぜんへいきだったのに。 「・・なー、隣、いってい?」 「・・・ツナ・・って呼んでい?」 あいつのせいだ。 「・・・俺は、"京子"じゃなくて"綱吉"の方に興味があるんだけど」 山本が俺にあんなことを言うから。 だからおれは、 「友達じゃなくて、・・・親、友・・とか」 生まれて初めてしんゆうが出来た。 「ツナ、おはよう」 生まれて初めてしんゆうと一緒に学校へ行った。 「今日は天気いいから屋上で食べね?」 生まれて初めてしんゆうと一緒にお昼ご飯を食べた。 「ん、ツナにプレゼント」 生まれて初めてしんゆうになにかをもらった。 「ツナ、遊びに来たぜ!」 生まれて初めてしんゆうが家に遊びに来た。 「ツナ、そんな緊張しなくても」 生まれて初めてしんゆうの家に遊びに行った。 「ツナ、ここわかる?」 生まれて初めてしんゆうと勉強をした。 「ツナぁー、このままサボろっか?」 生まれて初めてしんゆうと授業をサボった。 「ツナ、今帰り?」 生まれて初めてしんゆうと一緒に家に帰った。 「もしもし、ツナ?」 生まれて初めてしんゆうが電話をくれた。 「てかツナ、このままサボんね?」 生まれて初めてしんゆうと学校をサボった。 「ツナ!」 って、山本が笑顔で呼ぶから。 「ツナは俺と一緒のチームな」 「俺らまた補習だってよ」 いつもいつも俺に気を遣ってくれるから。 「助っ人とーじょー」 「大丈夫か?ツナ」 いつもいつも俺を心配してくれるから。 「ツナ!」 って、だいじなしんゆうが。 だから。 だから、おれは。 ひとりでいるのがへいきじゃなくなったんだ。 あいつのせいだ。 あいつのせいだ。 「・・ツナは、特別だと思ってんのな、俺」 おれがひとりでいることがへいきじゃいられなくなったのは。 ぜんぶ。 全部ぜんぶ。 あいつのせいだ。 「山本は、・・・俺といて・・・・楽しい?」 ともだちなんかいらないと思ってた。 「・・俺のこと、親友だって言ってくれたの、・・・あれ、嘘なんでしょ?」 裏切られるのがこわかった。 「俺は、・・・俺は、京子ちゃんと仲良くなるための繋ぎなんでしょ?」 またひとりぼっちになってしまうのが、こわくてこわくて。 「・・・・・・もう、無理して一緒にいてくれなくていいから」 ただ、自分がきずつくのがいやなだけだった。 「ツナ!」 おれは、とりかえしのつかないことをしてしまった。 next |
2007.04.21 |