「おれ、たけし!おまえは?」

「・・つ、つな・・・つなよし・・・」

小さい頃、近所の公園で大きな男の子に会った。

「ふーん。・・じゃあ、つなだな!」

自分と比べるのはどうかと思うけれど、ひどく体格差があって同い年だと聞いたときには正直びっくりした。

けれど、それよりも、小学校でも友達から話しかけられたことがあまりなかったのに、公園で、しかもこんな大勢いる中から俺に話しかけてくることにびっくりしたことを今でも覚えている。

「・・えっと・・・、」

「たけしでいーよ!つな!」

かっこよくて人気があって、俺とはまるで正反対の、だけど俺の大事なともだちだった人。

その人と、まさか同じ学校の同じクラスになれるなんて。



たけしくんには、ずっと驚かされてばかりだ。
















2 背伸び















「・・・やまもと、・・・たけし・・・」



入学式のその日、クラス名簿の貼り出された掲示板にその名前があったときには心底驚いた。



たけしって、たけしって、



まさか本人なわけないだろうと最初は思った。だって、下の名前しか知らなかったし、もちろんどういう字でたけしと言うのかも知らなかったから。

けれど、変な言い方かもしれないけれど、なんとなく本人かもしれないと、そんなよくわからない自信もあった。

だから、教室でその名前の人を見た瞬間、それは驚きとともに確信に変わった。

あの笑い方も、雰囲気も、全部あの頃と同じ。





「・・たけしくんだ・・!」





まさか、本当に、また会うことが出来たなんて。

しかも、同じ学校の、同じクラスになれるなんて。

なんて、そう浮かれていたけれど。









初めて会ったのが小学校低学年の頃で、高学年になってからはあの公園には行ってないから、軽く5〜6年の月日は流れている。だから、向こうが覚えていないことくらいわかっていた。

こんな、地味で目立たないダメツナのことなんか。

だけど実際忘れられていたんだと思うと、正直ちょっと切ない。

たけしくんは昔から人気者だったんだから、俺なんて覚えてないに決まってる。大勢の中のたった一人。

ていうか、そもそも俺のことを友達だと思ってくれてたのかどうかも謎だけど。



だから、



あのとき、





「・・なー」





「隣、いってい?」







びっくりした。








「・・・ツナ」





って呼んでくれたときも。



もしかしたら、って。



けれど、





「・・って呼んでい?」





って言われたときは、あぁやっぱり覚えてないかって切なかったけど。

それはわかってたことだから仕方ない。そう思った。5〜6年も前の、しかもこんな地味で目立たない奴のことなんか覚えてる方がおかしい。

でも、隣に座ってじっと俺のことを見ていたときは、もしかして、って期待したけれど。





「・・・ツナって、笹川と双子なんだよなぁ」





そう言われたときは、たけしくんも結局京子ちゃんと仲良くなりたいから俺に話しかけてきたんだと、少なからずショックを受けた。

「だって、・・京子ちゃんのこと以外で、俺に話しかける人、・・いない、から・・・」

だからもう、期待するのはよそうって。そう決めた。








ところだったのに。













「・・・俺は、"京子"じゃなくて"綱吉"の方に興味があるんだけど」













「えっ!?」

こんな、思ってもみなかった台詞が返ってくるなんて。








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ツナはきっと、そういう思い出はずっと覚えてそう。
2007.04.10
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