1 初恋



ツナ、って呼んだ方がいいのか。いや、でもそんなに親しくねーしな。てか、全然喋ったことねーし。

じゃあ、笹川?うーん、でもあいつ双子だしな。どっかでぐちゃぐちゃになりそうだ。

綱吉。ってだからそんなに親しくねーって。

ダメツナ。いきなりダメツナってな、いくらなんでもそれは酷い。てか、そう言ってあいつを傷つけたくない。



やっぱりここは妥当に。



山本は頬杖をついて、今一番気になる彼の背中をじっと見つめていた。

さっきオレンジ色になったばかりの夕陽が射し込む教室は、ただ今山本と彼の二人きり。授業で出された小テストの点数が散々だったので、揃って補習を受けさせられていたのだ。

よく考えりゃ、俺も補習常連組だったんだよな。話しかけるチャンスはいくらでも・・・って酷い話、ツナの存在自体最近やっと知ったんだけど。

あ、今ナチュラルに俺ツナって言っちゃったよ。実際本人にそう呼んだわけじゃないけど。

つか、今しかねぇよな。うるさい奴もいないし。あぁでも、実際話しかけるとなるとちょっと緊張すんな。

「・・・ツ、」

ツナって呼んでいいんかな。あー、わかんねー。もういーや。




「・・なー」




結局散々考えた挙句、山本はそうやって呼ぶのが精一杯だった。

ツナは突然声を発した山本にびくりと身体を震わせ、恐る恐るうしろを振り向いた。

「な、なに・・?」

「隣、いってい?」

「・・・・・・」

ツナは少し考えたあと、こくりと小さく頷いた。

山本は机に散らかした勉強道具と、机の横にかけていた鞄を持ってツナの隣の席に座った。





「・・・ツナ」





今度は突然自分の名を呼ばれ、ツナは驚いたような顔で山本を見る。

「・・って呼んでい?」

するとツナはこくこくと首を縦に振った。その反応を見て、山本はホッと胸を撫で下ろす。

あぁ、やっぱ近くで見るともっとかわいーな。

って、かわいーって。いや、でも実際そこらへんにいる女子よりかわいー気がする。

「あ、の・・・?」

思わずじっと見つめていたので、ツナは気まずそうに困ったような顔をした。

「あ、わり・・」

そう言われ一瞬ツナから視線を外すが、やっぱりどうもツナの方に視線が戻ってしまう。

女の子みたいなぱっちりした瞳、色素の薄い蜂蜜色の髪の毛、肌は白くて触れたら壊れてしまいそうだ。

「・・・ツナって、笹川と双子なんだよなぁ」

なにもかもが自分とまったく違う人間のように見えて、思わずそんな言葉を漏らした。

ツナはまたびっくりしたような顔をしてこくりと頷いた。

「・・そんなに、・・似てない・・?」

「いや。そっくり。」

たぶんツナが女の子なら、絶対にモテそうだ。

「・・あの、・・山本、くんも、その、・・京子ちゃんが好き、なの?」

「山本くんって」

女子以外から初めてくん付けされた。てか、ちょっとときめいた。

「ごめ、・・あの・・」

「山本って、呼び捨てでいーよ」

むしろ武の方でもいい。くん付けも捨てがたいけどな。

「えと・・・、山、本、も・・そうなの?」

「なんで?」

「だって、・・京子ちゃんのこと以外で、俺に話しかける人、・・いない、から・・・」







「・・・俺は、"京子"じゃなくて"綱吉"の方に興味があるんだけど」







「えっ!?」

それが俺とツナのファーストコンタクト。








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ツナが「山本くん」って呼んでたら萌えるかもしれない。
2007.04.08
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