1 初恋



ツナは友達がいないらしかった。話し相手は小さい頃から家族だけ。

兄貴は暑苦しいくらいフレンドリーなのに、双子の姉はなにもしなくても自然と周りに人が集まってくる感じなのに、兄弟でも性格までは似ないものなのかと思った。俺は一人っ子だからよくわかんねーけど。

だからか、ツナは俺とあまり目を合わせてくれない。たまに合ってもすぐに外される。会話は途切れ途切れ。俺が一方的に喋る。

ただの友達だけど、俺にもあの日見た、笹川に見せたような笑顔をして欲しかった。





「ツナ」

「あ、・・おかえり」

昼休みの教室は騒がしい。弁当を持って他のクラスの奴らもやって来るから余計に。

そんな教室の中でそこだけ空気が違うみたいに、ツナのそばは静かであったかかった。

山本はあのファーストコンタクトの次の日から、ツナと一緒にいることが多くなった。周りの人間は、どうして山本がダメツナと、という反応をしたが山本はそんなことは至って気にしていない。ツナといたいからツナといる。ただそれだけだ。

今日の昼休みもツナの前の席に腰を下ろす。

「ん、ツナにプレゼント」

「?」

そう言って山本は、ツナの前に小さなカップのプリンを置いた。

「どうしたの?これ・・」

「売店のおばちゃんがサービスだって」

「え、でもこれ、山本が、」

「いーよ。だって2個もらってきたから」

自分の前にもプリンを置いて、な、と笑った。

「・・・・・・」

「どした?もしかしてプリン嫌いだった?」

「や、違くて、その・・こんなの、初めて、だから・・」



そのあと、不意に、









「ありがとう」









それはあの日笹川に見せたような、あの。





「・・・っ」





途端に山本の心臓が忙しなく動き始めた。

「・・な、なんだこれ・・・」

「山本・・?」

「・・やっべ・・」

「だ、大丈夫・・?」

俺にも笹川に見せたあの笑顔をして欲しいとは思ったけれど、こんなの不意打ちだ。卑怯だ。

「や、気にすんな。うん」

「?うん・・」

それからどくどくと山本の脈は治まることもなく、今度は山本の方がツナの目を見て喋れなくなった。











山本の初恋。です。一応。
2007.04.09
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