10. 眠る



「・・っ、エロ本っ!!」



風呂上がり、山本は真っ赤な顔をしたツナに思い切り怒られた。

「ごめんって、ツナ」

「なんでまた、・・するんだよっ!」

「いやー、ツナがあんまりかわいい声出すからさ。つい、な」

「つい、じゃないっ!」

結局二人で入った風呂場で、ツナがまたお腹を壊さないよう山本がツナの身体の中に入れたものを全部吐き出させようとしたところ、まるで体を重ねたときのような声を上げたので、山本が我慢出来なくなりもう一回戦風呂場で行ったのだった。

「だってさ、いくら濃いぃのしたって、健康な14歳にたった一回っつーのは足んねーって」

「お、俺は一回でじゅーぶんだよっ!」

俺の身にもなってよっ!とツナは叫んだあと、洗面所の扉を勢いよく開けた。



瞬間、がくん、と視界が揺れ、



「おっ、と」

ツナが倒れる前に山本がツナをかばう。





「・・でも、気持ちよかったろ?」





耳元で低く囁いて、に、と笑った。きっと、この艶っぽい声と大人びた笑顔を至近距離でされて卒倒しないのはツナくらいだろう。

「・・っ、バカ本っ!!」

そうして今度は嫌がるツナをムリヤリ肩に担いだ。

「っ、下ろせっ!!」

「腰が立たねーくせに」

「・・っ、誰のせいだよっ!」

「あんまり暴れてっと落ちるぞー」

「エロ本っ!へんたいっ!」

次々と出てくるツナの罵倒に全部笑顔で応えながら、山本は二階へ上がった。









「山本にはエロ神様が憑いてるんじゃないのっ!?」

二階へ上がってベッドの上に下ろされても、ツナの山本への悪口は続いていた。

「まだ言うか」

山本は笑いながらツナの前に座ると、ぽん、と頭を撫でた。

「疲れたろ?もう寝る?」

「・・言われなくても寝るもん」

ぱし、と山本の手を払って、ツナは拗ねたようにそう答えると、山本に背を向けてごろんと横になった。どうやら機嫌が悪いらしい。

山本はそれを見て嫌な顔をするでもなく怒るでもなく、ふ、と優しい笑みを浮かべてベッドを離れる。

「・・やまもと・・?」

急に山本の気配がなくなって、不安になったツナは顔を壁から部屋の中へ向けた。

「ん?」

かちり、山本と目が合って途端に恥ずかしくなる。

「・・ね、寝るの?」

「おー」

「ふーん・・」

「ツナはベッド使っていいから」

「え、・・山本、は・・?」

「俺はここで寝るし」

「・・そっか」

そう言って山本は押入れを開けて、ツナが何度か使わせてもらった来客用の布団を出し始めた。

なんだか途端に寂しく思えた。思い出すのは顔に火が出るくらい恥ずかしいけれど、ほんの数時間前まで体を重ねていたのだ。このベッドで。それについさっき、少々ムリヤリではあったけれど、二回目のセックスもした。

身も心も山本の色に染まって、改めて恋人同士になれた。はずなのに。

今さら別々の布団で眠るなんて。そう思ったけれど、

「じゃツナ、電気消すな?」

「あ、う、うん」

「おやすみー」

「おやすみ・・」

ぱちん、と電気が消される。一瞬で闇に包まれた。もぞもぞと山本が布団に入る音が聞こえる。





一緒に寝たい。なんて、言えない。





一緒に寝たいと自分が言えば、山本は絶対に一緒に寝てくれるだろう。でも山本はもしかしたら一人で寝たいのかもしれない。一緒に寝たいと思っているのは自分だけかもしれない。そう思うと言えなかった。








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お風呂えっちを一回書いてみたい。と思った。
2007.06.24
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