広い日本のどこかにある山奥に、とても平和な村がありました。

その小さな村にはとても怪しげな工場が一つ、小高い丘の上に建っていました。







第一話「餡パンマン一家」






その工場内に暢気な歌が一つ。



『愛と勇気だけがともだちさ〜♪』



そこでその歌はぶちりと切れた。

「相変わらずワンパターンだな」

大層可愛らしい声を発したその人物は、手に持っていたリモコンを置いた。

「愛と勇気だけが友達って、どんだけ哀れなヒーローなんだ」

ぼそりとそう呟いたのは、この工場の工場長邪悪(ジャム)。愛称はリボーン。なぜジャムなのにリボーンなのか、そこはあえて突っ込まないでほしい。

「・・・ヒーロー界をナメやがって」

その呟きは、同時に開けられたその部屋の扉の音によって掻き消された。

「がはは!死にさらせ!リボーン!」

「・・・・うぜぇ」

手榴弾を手にそう叫び現われたのは、この工場のマスコット犬(らしい)地図(チーズ)。愛称はランボ。なぜ犬なのに牛の角があるのかとか、なぜチーズなのにランボなのかとか、その辺りの突っ込みもあえて入れないで頂きたい。

投げられた手榴弾をリボーンはランボに投げ返す。それにより、ランボがその爆発に巻き込まれたのは言うまでもない。

「リボーンちゃん!大変です!」

爆発と同時に現れたのが、工場長の一応助手であるらしい端子(バタコ)。本名は三浦ハル。なぜハルというのにバタコなのか、それについても(以下略)。

「なんだ?」

「今月も赤字なんです!」

ほら!とハルが見せたのは家計簿。今月の収支合計額は大幅なマイナス。

「ツナさんたち頑張ってるのに、どうして・・・」

ちらり、リボーンはさっき手榴弾を受けて真っ黒になったランボを見た。

「・・・ぅ・・、が・ま・ん・・!」

赤字の最大の原因はあいつだな・・・。

自分のことを棚に挙げて、リボーンはそんなことを心の中で思った。

この工場にはこの3人(正確に言うと2人と1匹)と、あと他にも3人の住人がいる。それが、



「お、今日も派手にやってんな」

爽やかな笑顔で入って来たのが、食パンマン(しょくパンマン)。本名山本武。

「リボーンさん!ただ今戻りました!」

リボーンに対してのみ直角90度キレイにお辞儀をしたのが、辛パンマン(カレーパンマン)。本名獄寺隼人。

「ちょっと!リボーン!なにこれ!」

手に持っていたチラシのようなものをリボーンに見せて、やや半泣きでそう叫んだのが、餡パンマン(アンパンマン)。本名沢田綱吉。通称ツナ。



この3人がこの工場の居候であり、



「帰って早々うるせーぞ、ダメツナ」

「なんでこんなのが村中に貼ってあるの!?」

ずい、と目の前にチラシを出され、リボーンは仕方なくそれを受け取る。

「・・・なんだこれは」

「俺が聞きたいよ!」

そのチラシにはでかでかと『レンタルヒーロー』の文字。

「レンタルヒーロー・・・?」

そのチラシにはこう書いてあった。



『村で一番のイケメンヒーローをレンタル致します。

ヒーローNo.1 食パンマン

爽やかな笑顔でノックダウン☆運動神経抜群の長身イケメンヒーロー!

ヒーローNo.2 辛パンマン

女を寄せつけない硬派な雰囲気が魅力的☆ちょっぴり短気なイケメンヒーロー!

ヒーローNo.3 餡パンマン(当社イチオシ!)

かわいい笑顔にメロメロ☆むしろ守ってあげたくなっちゃうイケメンヒーロー!

1時間からレンタル可!最長3日まで!!』



そう、この3人はこの小さな村を守るヒーローだったのだ。ちなみに、ヒーローなのに本名があるのは(以下略)。



「・・ほう、おもしろいな」

にやり、リボーンは嫌な笑みを零した。

「なに他人事みたいに言ってんのさ!これ作ったのリボーンだろ!?」

その笑みに嫌な予感しかしなかったツナは、そうリボーンに抗議した。

「俺じゃねぇ」

「嘘だ!」

「あ、それハルが作りました」

「はっ!?」

ぐるん、とハルの方へ顔を向ければ、ハルは満面の笑みを返してきた。

「な、なんのために・・?」

「ここ最近ずっと赤字が続いてたので。でもいい案だと思いません?レンタルヒーロー!」

「・・・いや、どうかな・・・?」

「アホ女が考えただけあって、内容がアホだな」

「ハルはアホじゃないです!」

「てか、ツナのこの写真俺にくんね?」

「ダメです!山本さんにあげたらどんな用途に使われるか・・・」

「レンタルヒーローか・・」

「やめろよ?絶対やっちゃダメなんだからな!」

「ランボさんはツナを指名するもんね!」

「させるか!アホ牛!!」

「ランボじゃツナは満足させらんねーって」



果たしてこんな平和な村にヒーローなんて必要なのか。

そもそも、少し問題のありそうなこのヒーローたちに村を守れるのか。

それはまた別のお話。







おまけ



というより、この話のオチはどこにあるのか。
そのツッコミもかわいそうなのでしてあげないで頂きたい。
2007.05.01


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