優しさは必要だけれど、過剰すぎる優しさはその人のタメにならない。
むしろその優しさが毒になることだってあるのだ。





 「つーワケで、山本、今日から一週間、お前は優しさ減量週間だ」

 「ん?」





何だそりゃ?また何か面白ぇ遊びでもすんのか?
そう思って小僧の顔を見ていたオレの横で、ツナが「何またワケの分からないこと言ってんだよ、リボーン!」っつって身を乗り出してた。
これがオレんちでの出来事だったら、ツナはテーブル代わりに置いてあるオレの部屋のちゃぶ台を、綺麗にひっくり返していたかもしれねーな、なんて、怒った顔も可愛いツナの顔をオレは眺めている。(獄寺がいねーと、ツナの顔も十分に堪能出来るのな!)























  優しさ減量週間






















 「優しさのコントロールっつーのは、ボンゴレファミリーの一部下としてボスをサポートしていく上で、重要なテクニックのひとつだ。部下たるもの、ボスのサポートをすると同時に、ボスの判断を厳しく正す、確かな意志も必要だからな。ボスの指示をへーこら聞いてりゃ良いっつーもんじゃねぇ。そういうわけで今日から一週間、山本はツナに厳しく接するようにしろ。名付けて、“優しさ減量週間”だ」





うるせェぞツナ、と言いながら、オモチャの銃(最近のオモチャって、ホントよく出来てんなー)でツナを黙らせた小僧が、つらつらと言葉を紡いでいく。
これもマフィアごっこの一環なんかな、と思いながら聞いていたオレの隣で、ツナは眉間に皺を寄せながら、小僧に問い掛けた。





 「何か筋が通ってるような通ってないようなこと言うし・・・。つーか山本相手にナチュラルにマフィアとかボスとか部下とか言うなよ!しかも何、優しさ減量って?」

 「減量っつった方が、何かお得な感じがするだろ。“減量に成功して、貴方もミラクルボディをゲット☆”みてーな、ダイエットと同じ効果を狙ってみたぞ」

 「何そのムチャクチャな理由?!や、山本も何か言ってやってよ!」





ツナがぐるんとオレの方に顔を向けて(ヤベ、その顔も可愛い)、オレに尋ねる。





 「んー・・・オレ、イマイチ何やれば良いのかよく分かんねえんだけど」





頬を掻きながらオレがそう言えば、





 「簡単なことだぞ。一週間、ツナを甘やかさなけりゃ良いんだ。たとえツナが宿題忘れようが、風紀の奴らにボコボコに殴られようが、車にはねられようが何しようが、ボスなら何とか切り抜けてみやがれ精神で見守ってやれ」





と返ってくる。
・・・ああ、成る程な。





 「ちょ、それ流石にヒドくない!?山本だって、そこまで非道じゃな」

 「いーぜ。やってやるよ」





にかっと笑って言うと、ツナの顔がピシッと固まった。
そんな怖がる必要ねーのに。
何かオレがツナを怯えさせてるみてーだ。(・・・でも怯えてるツナの顔も、すげー可愛いんだ、マジで)
そういうわけで、オレの優しさ減量週間っつーのはスタートした。




















 「・・・山本、優しさ減量週間じゃなかったの」





困ったように言うツナ。
その小さな体は、すっぽりとオレの腕の中に収まっている。
ちなみにここは教室で、オレたちの他には誰もいない。
遠くから生徒が騒ぐ声が聞こえるけど、それ以外は静かなもんだ。





 「優しくはしてねーよ?」

 「だ、抱き締めておいて、何が優しくしてない、だよっ」

 「んー」

 「今だけじゃないよ。この一週間、相変わらず山本は、オレがゴミ捨て行ってたら手伝ってくれたし、寒いだろってマフラー貸してくれたし、ヒバリさんに睨まれたときは一緒に逃げてくれたし・・・。オレは嬉しいけどさ、リボーンが言ってたこと、全然無視してるじゃん」





よくそんなに覚えてるもんだと感心しながら、ふわふわしたツナの髪を撫でる。
山本、とオレが真面目に答えようとしないのに焦れたのか、ツナが少し怒ったような声で、オレの制服の胸元辺りをぎゅっと掴む。
掴まれたところが、ちょうどオレの心臓辺りで、ツナの手にオレの心全てが握られてるみてーだ、なんて思った。





 「オレは別に、特別ツナに優しくしてるつもりはないぜ。ツナが大事で大好きだから、オレがツナにしてやりたいことやってるだけなのな。だから、オレがやってるのは優しさじゃなくて、どれだけツナのこと好きかっていう愛情表現だっつーこと」

 「な、何それ・・・」

 「ツナにはオレがやることは全部、単なる優しさじゃなくて、オレのツナへの気持ちなんだって思って欲しいんだよ。ツナをダメにするような、甘やかした優しさじゃない。ツナを幸せに出来るっつー愛情なら、問題ないだろ?優しさ減量も何も、オレの中にあるのは、ツナが好きだって気持ちだけ」

 「・・・リボーンが聞いてたら、何言ってんだって怒るよ、きっと」

 「かもなー。でもまあ、小僧には屁理屈に聞こえても、ツナに分かってもらえりゃ、それで十分だしな!」





オレの気持ち分かったか?と、笑って聞けば、ツナは小さな声で「・・・うん」と返してくれた。
それが嬉しくて、腕の中のツナをうんと強く抱き締めたら、ツナが苦しそうな声を上げたもんだから、オレは慌てて腕の力を緩める。
ぷは、と顔を上に上げたツナのあまりの可愛さに、堪らずオレは、ちゅ、と唇を重ね合わせて、離す。
ツナを幸せにしたいって思うよりも先に、幸せにしようと心が、体が動く感じ。
それは優しさっつーより、きっとツナの全部が欲しいと思う、本能みてーなモンで。





 「ちょ、山本///!?」

 「ツナ、大好きだぜ!」





そう言ってオレはもう一度、ツナの唇に口付けた。
オレはツナが思ってるほど優しくなんかないんだろーけど、ツナ、お前のことを思ってるこの気持ちには、何処にも嘘ひとつないんだぜ?









   END










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☆あとがき☆
 こんにちは、06. 「優しさ減量週間」でSSを書かせていただきました、東城時雨と申します。
 今回山ツナ祭りという、とってもとっても素敵なお祭りに参加させていただけて、本当に嬉しいです!ありがとうございますv
 タイトルに沿ったお話に仕上がっているかどうかは分かりませんが・・・精一杯山ツナへの愛を込めさせていただきました。
 ツナと山本が、お互いにずっと幸せでありますように!


 あとおまけで、本当に短いんですが、リボーン先生の呟きとか。
→優しさ減量週間終了の翌日の沢田家、凄腕ヒットマンの家庭教師様の呟き。

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いらないコメント>>

お祭り一番乗り投稿、ありがとうございました!!
最初、山本がすんなりOKするもんだから、ちょっとどっきりしましたが、結局優しさの減量出来てない山本にときめきました。
甘々な山ツナに、こちらの方が幸せになりましたvvありがとうございました!! (野愛)


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「WHISTLE!」メイン。REBORNも始められたらしいですよ、奥さん。


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