「なぁツナ。このまま学校抜け出して海、行かねー?」

言い出したのは背の高い少年。
それに対して、ツナと呼ばれた背の低い少年が頷く。
そして2人は、早速その計画を実行に移すため、学校を抜け出した。









海までの坂道








「何とか学校、抜け出せたね」
「ん、そうだなー」

並んで歩くは沢田綱吉――ツナと山本武であった。
彼らは海へ行くために、午後の授業をほっぽり出して学校を抜け出していた。

「…ほんと、上手く先生に見つからずに抜け出せたなぁ……」
「先生ならまだしも、ヒバリに見つかったりなんかしたら確実にやばかったのなー」
「……うわ、それシャレにならないって……!」

彼らの学校、並盛中を抜け出すのは至難の技である。
まずは先生の目を盗み、そして更に学校…いや、地域最強の風紀委員長、雲雀恭弥にも見つからないように行動しなければならない。
仮に見つかってしまったとすれば、2人ともが確実に地獄を見るだろう。

「まぁ、学校は抜け出せたんだし、考えても意味ねーよな」
「あ、うん、そうだね」

笑って言う山本に釣られるようにしてツナも笑う。
そんな風にほのぼのとした空気を作り出している2人だが、まだ安心はできない。
なぜなら、海に行くまでに人に見られて学校に連絡されたら意味がないからだ。
なので、遠回りになるが人通りの少ない道を選んで海に向かった。


人に鉢合わせしそうになって慌てて隠れたり、道とは呼べないような細い塀の隙間を通ったり、たまに道を逆走したり。
迂回に迂回を重ねつつも、少しづつ海に近づいていく。


そして何度目かの狭い路地を通った時、山本がふと笑いながら言った。

「……なんかさ、こうやって人通り少ない道選んで歩いてると、何か悪いことしてるみたいだよな」
「悪いことって……まず学校を抜け出したこと自体悪いことじゃん」
「はは、そうだけどな……まぁなんつーの、駆け落ちみたいなのなー」
「………………んなっ、か、かか、駆け落ちっ!?」

笑顔でさらりと言った山本の言葉に、一瞬硬直の後、顔を真っ赤にしてツナが叫んだ。

「でもさ、本当にそれっぽくね?人目を忍んでの逃避行ってかさ」
「な、何変なこと言ってんの山本っ!!」
「ははは、悪ぃ悪ぃ……っと、ツナ隠れろ!人が来た!」
「え、そんなこと言われても、こんな細い路地じゃ隠れる場所なんてないって!!」
「……ごめんなツナ、ちょっと我慢してくれ」
「え、我慢って……うわっ!?」

言って、ツナを肩に担ぎ上げる。

「な、何やまも……!?」
「絶対こっちのほうが早いのなー?」
「う、うわわわっ!!?」

そして山本は路地を逆走し、路地を抜けた先の物陰に隠れた。

「…………ここなら多分安心だろーな」
「……え、えーっと…山本?」

路地の様子を見ている山本に、おずおずとツナが話しかける。

「ん?どうしたツナ?」
「…えっと、なんかごめん」
「どうして謝るんだよ?」
「いや…だってオレの足が遅いから山本がオレ担いで走ったわけだし……」

心底申し訳なさそうに言うツナ。

「何言ってんだよ、ツナってそんな足遅くないだろ?」
「いや、遅いって!」
「んなことねーって。あの路地、2人並んで走れるほど広くねーから走るとどっちかがつっかえるなーって思っただけなのな?」
「…それでも何かごめん」
「いーから謝んなって!ツナすげぇ軽かったから担いでも苦じゃなかったしなー」

からからと笑う山本。
それに対してツナは赤面する。

「うぅ……」
「だから気にするなって……っと、もうそろそろ行っても大丈夫だな」

物陰から出て振り向き、ツナに手を差し出す。

「ほら、早く行こうぜ?」
「…あ、うん、そうだね!」

そしてツナは山本の手をとり、2人で再び路地に入っていった。

「もうすぐだな」
「え?」
「確か、ここ抜けると坂道あるのな。で、その坂道登ったら海が見えるのなー」
「へぇ、そうなの?」
「…まぁ、オレの記憶が正しかったらだけどな」
「え、それって道に迷ってるって可能性もあるんじゃ………
「そうかもしんねーけど、どっちにしろ並盛町だし、家には帰れるだろ」

笑う山本。
ツナは最初呆れたような表情だったが、しばらくして山本と一緒に笑い出した。

「あはは、山本計画性なさ過ぎるよ」
「ははは、だって海へ行くってのは思いつきだから計画なんてしてねーって」

そんなふうに笑いながら歩いていると、路地の出口が見えてきた。
そのまま路地を抜けると視界が開け、上り坂が現れる。

「お、やっぱりオレの記憶は正しかったのなー」
「あはは、道に迷ってなくてよかったぁ」
「……オレってそんなに信用無い?」
「あ、いや…そういうつもりじゃないんだけど……」
「そうか?」
「うん、そうだって!」
「……そんじゃ、坂上るか?」
「うん、そうだね…行こう、山本!」


もうすぐ、もうすぐだ。


「ツナ」
「ん、何山本?」
「オレさ」
「うん?」
「ツナのことマジ大好き」
「〜っ!?い、いきなり何!?」
「はははっ、ツナは?」
「え?」
「ツナは、オレのこと好き?」
「……っ、うん……オレも……山本のこと大好き……」
「………うわ、やべっ……今のツナ超可愛い」
「うぅ、言わせたの山本でしょ!」
「ははは、そうだなー……サンキューな、ツナ」
「な、何でお礼言うの……?」
「だって嬉しかったから」
「……じゃあ、オレも、嬉しかったから…ありがと、山本」
「ん、どういたしまして」


もうすぐ、あと少し。
この坂を上りきれば、


  海が見える。






―END―












**********

どうも、調子に乗って再びやってきました、蒼月です。
今回はちゃんと山ツナ祭り用に書きました!
「50 トモダチ」みたいなセコいことはしてません!!
…さて、今回のは一応、「50 トモダチ」と繋がってます。
まぁ別々でも十分読めますが(笑
……頑張って山ツナれてるようにしたのですが、ちゃんとうちの山ツナは山ツナれてるのか心配です(汗
ちなみに、その後(海に着いた後)の絵も描いてみました。
どちらにも山ツナへの愛は精一杯こめました!(笑
山ツナ万歳!!


**********

主催のいらないコメント>>

山ツナ万歳!ありがとうございます!!
前回の「トモダチ」と繋がってるということで、今回「トモダチ」から一歩進んだ感じなんですね!え、違いましたか?
最後に絵も付けて頂けて・・・二度おいしいvかわいい山ツナ、ありがとうございました!! (野愛)




[PR]動画