ボンゴレリング争奪戦から少しの日が過ぎた平日の話。 爽やかな風が吹き抜け、頭上に広がるのは大きな青い空。 ここは並中の屋上。 手すりに寄りかかって風を全身に浴びるオレの隣には、ツナが座っている。 「……山本、後悔してない?」 「後悔って何についてだよ」 ツナがいきなり変なことを聞いてきた。 オレは今の生活に後悔なんてしていない。 だから、何について後悔する必要があるのか聞いてみた。 するとツナ、こんな言葉を返してきやがった。 「……オレが前に、ここから飛び降りようとした山本を止めたこと」 それって、オレが自殺したがってる奴みてーじゃねーか。 オレにはそんな自殺願望なんてねーし、オレは今を楽しんでるし。 あの時屋上ダイヴを止めてくれたことについてはむしろ感謝してる。 だから後悔してるはずなんてねーのにな。 「何言ってんだ、後悔なんてしてねーよ。むしろ感謝してるのな?」 「…あ、いやそう言う意味じゃなくて……」 「じゃあ、どういう意味なんだよ」 「……………」 あれ、ツナ黙っちまった……。 オレ、何か変なことでも言ったのか? 「…直接言うのが怖いんだけどさ……オレと友達になったこと、後悔してない?」 さっぱり意味が分からない。何で友達になったことについて後悔する必要がある? そんな質問には答えたくないから、話をそらした。 「…………ちょっと待てツナ、なんで友達になったこととオレの飛び降りを止めたことが関係してるんだ?」 「あ、いや、えっと…最初からオレの言い方が悪かったね…。山本が飛び降りる時、オレが止めてなかったら多分今みたいに仲良く友達やってなかったと思うんだ」 「……まぁ、そうかも知れねーな……でもさ、言い方遠まわしすぎねー?」 マジで遠まわしすぎると思う。 ツナにはオレが死にたがってるように見えたのかと思ってヒヤヒヤしたし。 「あはは、ごめんね、山本。…でさ、オレと友達になったこと後悔してない?」 ……また同じこと聞いてきた。 何でそんなこと聞きたがるんだよ、ツナ。 「……後悔なんてしてねーよ。なんでそんなこと聞いてくんだ?」 答えによっては容赦しねー。 そんな気持ちを込めてツナに聞き返してみた。 「…だってさ、山本の右目、俺のせいで怪我したようなもんだし……」 オレの右目。 リング争奪戦の雨の守護者戦で怪我を負った。 そして今、その右目には眼帯がついている。 「なんだ、そんなことかよ」 「……そんなことじゃないよ……。オレが山本を巻き込んだりしなければ、山本そんな怪我を負わなかったし……」 えーっとすなわち。 ツナはオレがツナと仲良くなっちまったばっかりに、ああいうのに巻き込んで怪我させたと思ってるわけか。 「この怪我はツナが気にするようなもんじゃねーって」 「いや、気にするよ!山本には野球があるし、野球するにはやっぱり、両目が見えてないと辛いこともあると思うんだ」 「…………まぁ、確かに野球は両目見えてたほうがいいけどな。でも、前も言ったろ?ダチより野球を大事にするなんて、ツナと屋上ダイヴする前までだってな」 「……だから、オレと仲良くなったこと後悔してない?って聞いてるんだよ」 「いや、だから後悔してねーってさっきから言ってるのな?」 いまいち、ツナの質問の真意が分からない。 ツナは一体オレに何を聞きたいんだ? 「……ツナ、もしかしてオレと友達になるの嫌だったのか?」 ふと、思いついたことを聞いてみる。 …まぁ、こんなこと聞くのすげー怖いんだけどな。 「い、いや!そんな事ないって!!山本には色々助けられてるし………」 あ、ツナすげー慌ててる。 「…えーっと、だから……山本は野球より友達を大事にして、オレは山本の友達だから山本が怪我しちゃったわけで」 「んで?」 「で、オレが山本と友達じゃなかったら山本はそういう怪我をしなくてすんだわけで」 「そうだな」 「……うーん…なんか説明しにくいな……」 「…ツナ、さっきから一体何を聞きたいんだよ?」 「えっと……山本、オレのせいで最近怪我してばっかりだから……」 ………これはすなわち、自分のせいでオレが怪我してばっかりだから、うらんでないか……って事を聞きたかったわけか? で、友達になったことを後悔してないか……か。 「そっかそっか……でもな、こんだけ沢山怪我したりしてても、ツナと仲良くなったことは後悔してねーよ」 「……本当に?」 「本当だって…それに、野球よりダチを大事にするようになったのはあの屋上ダイヴでツナに助けてられてツナと友達になってからだし。そもそもあの時助けてもらえなかったら俺死んでたしな」 あの時まで、オレの中では野球が一番だった。 友達なんて野球の二の次。そんな考え方だったな。 でも今思うと、単に調子乗ってたのかもしれない。 俺から行かなくても、俺の周りにはいつも人がいた。 そいつら全員友達だと思ってた。でももしかすると、それは口先だけで、友達だと認めてなかったのかもしれない。 だから、あの屋上ダイヴはオレに本当の友達ができるきっかけの、とても大切な事件だったわけで。 ん?そう考えると、俺って最初から野球よりダチを大切にしてたのか?………まぁいいや。 「正直、本当にあの時は助かった。ツナ、知ってるか?あぁいう自殺方法って、行動に出ちまった後に必ず後悔するものなんだとさ」 「……そうなの?」 「ん、そうらしい。で、オレも例外なく、あの時後悔したんだよなー…でも普通、あの状況で助かるわけねーだろ?だから、半分諦めてた」 「………」 まぁ、正直言うと後悔した理由ってのは自分が死ぬことじゃなくて、ツナも一緒に巻き込んで落ちちまったって事なんだけどな。 「でも、ツナはあの状況でもオレを助けてくれた。そして、オレに友達の大切さを教えてくれた」 「そ、そんな!オレってそんなに凄いことなんてやってないよ…あの時は死ぬ気状態だったし…」 「ははは、オレもあの状態なツナが凄いと思ってたんだけどさ、でもツナは今のでも十分すげーのな」 ツナがきょとんとした顔でオレのほうを見てくる。 かわいいなー、もう。 「い、いやいやいや!オレって本当にダメツナだし、どこも何も凄くないって………」 「そんなことねーって、ツナはほんとすげーよ」 「うぅ、おだてたって何にも出ないよ、山本ぉ……」 ……ツナ、今言ったこと全部お世辞だと思ってんのかなぁ…この反応って…… 全部オレの本心なのに。 鈍いのか、それとも気付いてるけど自分に自信がないのか……… 「いや、本当にすげーって」 「……そんなことないって、本当に……」 いつまでもマイナス思考なツナの表情をちょっと変えてやろうと思った。 思い立ったが吉日、善は急げって言うからな。早速行動に移すか。 「ツナ、ちょっと立って」 「……?」 頭の上に「?」を浮かべながらもツナが立つ。 しっかり立ったのを見計らって、ツナを抱き寄せてみた。 「………っ、ちょ、ちょっと山本ぉっ!?」 「はは、ツナ赤くなってんなー」 「そんな問題じゃなくて、ここ学校の屋上だよ!?」 「大丈夫だって。もう何もしねーし、ツナの顔変わったしな」 「へ…?」 ツナ、またきょとんとしてるなー……自分の暗い表情に気づいてなかったってわけか。 「なぁツナ。このまま学校抜け出して海、行かねー?」 俺が言うと、ツナはきょとんとしたままで。 「……え、午後の授業サボるの?」 心配そうにそう聞いてきた。 「あぁ、そうだけど………ただの思いつきだから、ツナがサボりたくないんならやめとくぜ?」 「……うーん……5、6時間目の授業って何だっけ?」 「…確か体育と……忘れた」 俺が苦笑して見せると、ツナも笑ってくれた。 やっぱ、ツナは暗い表情よりも笑ってる顔のほうが似合うよな。 「あはは、もう1つの授業、なんだったっけなー」 「はは、さっぱり思い出せねーのなー」 「どうしようか、山本?」 「俺は別にどっちでも良いぜ?ツナが決めろって」 「そんなこと言われても、俺もどっちでもいいからさ」 「うーん、じゃあ授業受けるか?」 言うとツナの表情が一瞬曇る。 はは、どっちでもいいって言っときながら授業は嫌みてーだな。 ……まぁ、授業は好きじゃねーもんな、俺もツナも。 「ツナ、表情に出やすいのなー」 「え、嘘、表情に出てた?」 「あぁ、すっげー出てた」 俺が笑うと、恥ずかしいのかツナが顔を真っ赤にした。 「う、う〜……」 「じゃあ、海行くか?」 「………うん」 もう一度聞けばツナが頷いて。 「よし、そうと決まれば早速学校抜け出そうぜ」 そして俺たちは、きれいに広がる青空の下、海に向かって出発した。 ―END― |
********** えーっと、どうも初めまして、蒼月と申す者です。 リボーンにはまったのがつい最近で、一気に山ツナ熱が上がり、この素敵なお祭りに参加させていただきたくSSを書き上げました(正しくは、前々から書き上げてた山ツナSS3本のうち、お題に一番あうものを送ってしまったと言う……(汗) ………そしてすいません、何かあんまり山ツナれてないです。 そしてさらにお題に沿えてるか分かりません(汗 でも、山ツナへの愛は精一杯込めたつもりですから!(笑 山ツナ万歳!! |
********** 主催のいらないコメント>> 投稿ありがとうございます!! 全然そんなことないですよ!十分山ツナれてます!お題にも沿えてますし・・・すごい! ツナの言葉足らずなところを、ちゃんと山本がわかってくれてる感じとか、すごいツボです! 個人的には残り2本の山ツナSSとか気になってますが(笑)、爽やかに青い山ツナ、ありがとうございました!! (野愛) |