急いでTシャツとジーパンに着替え、山本の元へと向かう。 いきなりの訪問には慣れているが、(色々な人物がこの家にはいきなりやってくる)山本がこんな時間に、連絡もなしに来るのはめずらしい。 いったいどうしたんだろう。 熱い指先 「山本っ。」 「お、ツナ早ぇな準備。」 夜中だったので、寝ている奈々や子供達を起こさないようにそーっとツナは玄関を出た。 なので今も少し小声である。 「どうしたの??え?花火?」 「明日っから学校だろ?折角の夏休みなのにツナと花火してねぇなーと思い立ったもんでコンビニで買い占めてきた。んで、ツナの部屋電気ついてたもんで、ちょっと賭けで窓から呼んでみた。石投げてゴメンな。」 んでも出てきてよかった。と笑う山本に、ツナは疲れたように膝に手をついて腰を曲げた。 「一体なにがいるのかと思って緊張しちゃったよ・・。」 「わりーわりー。」 そう言って笑う山本に、ツナもさっきまでの自分が馬鹿らしくなり、一緒に笑った。 「んじゃ、夏休みの最後の思い出、ってことで花火すっか。」 こんな風に夜中に友達と二人で花火するなんてのも、ツナには始めてだったので。 「うん!」 嬉しそうな顔をして、ツナは頷いた。 ここじゃいくらなんでも、という事で二人、公園に向かう。 夏休み最後の日だからか、人通りがなく、通りには二人しか歩いていない。 まるで、この世界に二人きりみたいな、空間。 しん、と静まっている状況が少しいつもの空気と違うように感じてか、ツナは上手く言葉がでない。 いつも、何話してたっけ。 山本も同じように感じているのか、歩きながらも何も話さない。 しばらく沈黙のまま歩いている。 「・・・まだ、あっついよねー。」 耐え切れなくなったツナが先に口火を切る。 「そーだなー。」 山本も同意するも、そこで話は終わり。 「「・・・・・・。」」 いつも、どういう風に山本といたんだっけ。 「手とか、汗ばんじゃうね。」 「だな。」 「「・・・・・。」」 なんで。 「・・・あっつく、ない?」 「・・・あつい、な。」 手を繋いでいるんだろう。 公園の、入り口に着いて。ぴた、と山本は足を止めた。ツナも一緒に足を止める。 「多分、俺さ。」 ここでやっと口を開いた山本の声は、少し掠れていた。 だけども、しんと静まり返った公園では、その言葉一つ一つが鮮明だ。 つながれたままの手は、お互い湿っていて。ああ、手、拭きたいな。とツナは一人思う。 「花火なんて、どうでもよくて。うん多分、理由が欲しかった。」 汗ばんだ手が恥ずかしくてツナはTシャツでいいから拭いてしまいたかった。 「ただ。」 それを許さないかのように強く握られていて、手が更に汗をかくのがわかる。 そんな自分が嫌で、それが山本に伝わるのが嫌でツナはただただ手を拭きたかった。 「ツナに会いたかった。」 まるで二人きりのような暗い世界で。 あついのは、きっと夏の所為なのに。 この汗がそれだけじゃないのを、僕達は知ってしまった。
さてと。お題が指先なのに、思いっきり手ですみません。
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