今日で夏も終わるはずなのに。 あつい。 最後の花火 言葉に出来ない。ツナは公園の淡い光の中、じんわりと汗ばむ手をどうする事も出来ずにいた。 「・・・・わり、困らせたな。」 花火すっか。 と、そこでぱっと離された手。すたすたと公園の中に入る山本に、「うん・・」と返してその後ろを追 いながらも、汗がひいてひんやりとした手をごしごしとTシャツでツナは拭った。 山本のせいじゃないのに。困らせられたわけじゃないのに。 何もいえない。 そのままいつものような山本に戻ったのに、安心して甘えてしまう。 ちゃんと、言葉にしなきゃいけないことは、わかっているのに。 このまま誤魔化してしまえれば。この、手の汗のように拭い去ってしまえれば。 「ツナ何がしてぇ?」 「こう、円盤花火みたいなヤツ以外ならなんでも!あれリボーンに手裏剣のように俺の方にむかって投げられたんだよなー。ものすっごく熱かった・・・。」 「普通吊り下げてやるもんなんだけどなーソレ。さすが小僧な。」 「山本は何好き?」 「んー、ばーんと打ち上げ花火とかも好きだけど、こういう手持ち花火も好きだぜー?」 と、10本程一気に持って山本は火をつけた。 「それ既に手に持っていい量じゃないよ!手持ち花火の量超えてるって!」 笑いながらツナはそれを見つめた。 両手でその束をもって、一気に火花を散らす花火。 火に山本の顔が照らされて。 花火がきらきらと、アスファルトに反射しながら揺らめいている。 「あー、もうねぇなー。」 そのまま二人して束で花火をやったので、無くなるのは早かった。 「後は・・・線香花火、か。」 がさがさと買い物袋を漁りながら、出てきた線香花火を取り出す。 やる?と促されて、ツナは一本手に取った。 再び静かになった世界で、二人ぱちぱちと瞬く線香花火を見つめている。 線香花火はいくらなんでも一気にやったら虚しいので一人一本づつ。それでも二束程しかなかったので、ゆっくりと、確実に減っていっていた。 二人でどっちが早く落ちるか競争したりしながらほの明かりを楽しんで。 そして、とうとう最後の一本。 「じゃ、せーの、で火つけっか。」 「うん。」 せーの、と山本の持つライターの火に線香花火を近づけて。 ほぼ同時に、火球が散りだした。 物悲しい気分になるのは、最後の一本だからなのか。 二人、黙って見つめている。 「・・・なあ、ツナ。」 「・・・・え?」 呟いた山本の声が、とてもか細かったので。 ゆっくりと、かすかに触れる感触にツナは動く事が出来なかった。 そうして火花が、ぽとり、落ちる。 その瞬間、ゆっくりと離された唇。 「・・・・・帰るか。」 「・・・・うん。」 ばちばちと火球を揺らす線香花火が、一瞬のようにも永遠のようにも感じた。
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