夏休みが終わっても。 何事も無いように、朝は来る。 波の音 ・・・・結局宿題まっしろだ・・・。 全く眠れずにツナは朝を迎えた。ベッドに寝転がっても、どうにも寝付けなくて。 でもそれも、当たり前か。あんな・・・・・。 思い出しそうになったのを、ふるふると頭を振るって誤魔化す。 考えたら、何かがダメになりそうだから。 そうだ。それよりまずはこの宿題をどうするかだよ。 まだリボーンは寝ているので、何事も無かったように鞄に宿題仕舞っておこう。うん。 そーっと机に散らばる宿題を片付けようとすると、手に生暖かい感触を感じ、驚いて手をぱっと離した。 「レ、レオン!?」 途端、持っていた本が数冊下に落ちる。 バサバサ!! ああ・・・終わった。 最強の赤ん坊がむくりと起き上がるのが後ろからでもわかり。 ツナはごくり、とツバを飲み込んだ。 「じゃあ十代目のそのお顔のお労しい痣は、リボーンさんによるものなんですね。」 「うん・・・。ああ今日始業式終わった後が怖い。まじで怖い。」 「俺も手伝いますよ十代目!任せてください!」 「ありがとう・・!」 まるでわらにもすがるような表情でツナは獄寺を見た。ツナがすがる思いで獄寺を見るのは、まあ、こんな時ぐらいだが。 朝。ツナが玄関を開けるとおはようございます十代目!と門のところで獄寺が待っていたのだ。 そのままツナを見てどこのファミリーにやられたんですか!?と、ダイナマイトを取り出したので、ツナは慌てて説明したのである。 まっしろな宿題を見て家庭教師のきついお仕置きにあったのだ、と。 どこぞの家庭教師がいまどきそんなスパルタやるんだ。と、ツナはいつもながらに思ったが、言うなれば赤ん坊の家庭教師が普通いないよな、と諦めた。 ああでもほんと、寝てないし、ぶたれるし、頭くらくらする。 世界が揺れている。 あ ぐらり、世界が反転しそうになる。 「・・・っぶねぇ。」 けれどもその瞬間、がし、と世界は引き戻されて。 「よ、はよ。何だツナ、宿題終わんなくて貫徹かー?」 ツナの腕を掴んで倒れるのを支えたのは山本だった。 倒れるかと思って焦った。とニカと笑った後、すぐさま腕が離れる。 いつもの山本だ。 そう、ツナは思った。 「十代目大丈夫ですか!?今日は休まれた方が!!」 獄寺君が心配している声が聞こえる。 ツナの世界は揺れている。 ほの明かりに浮かぶ山本の顔がありありと思い浮かんで。 「ツナ!!」 「十代目!?」 どうして。 離れた腕が。 いつもどおりの山本が。 そのまま意識は闇へと落ちた。 目を覚ましたて見えたものは、自分の部屋の天井だった。 「・・・あれ?」 ゆっくりと起き上がると、がちゃり、扉が開く。 倒れる最後に聞いた声を思い出し、ツナは入ってくる人物を思い、体が強張らせた。 予想に反し、ひょこりと顔を出したのは、ランボだった。 「え?ランボ?」 ガハハハハ!とツナのベッドへ直行するランボに体当たりされ、ツナは少しむせる。 「あらあらランボちゃんったら。」 そう言いながら桶とタオルを持って入ってきたのは奈々だ。 「ツっ君、起きて大丈夫??今日登校中に倒れちゃったのよ?」 ランボを捕まえながら(動き回ると面倒なので)ツナはうん、もう大丈夫。と奈々に返す。 緊張した自分が少し恥ずかしい。なんで彼だと思ったんだろう。 「そう?最近まだ暑いから日に当たって湯あたりみたいになっちゃったのかしらね。」 「・・・かも。」 「まあ一応今日はこのまま休みなさい。先生にはもう連絡したから。ああそれから。獄寺君、心配してたわよ?彼がここまで運んできてくれたんだから、明日にでもお礼しときなさいね?」 「・・・え。」 ・・・山本は? 「え、何?」 「な、何でもない。・・・・獄寺君、が運んでくれたんだ。」 「そうよー。ここで目覚めるのを待ちます!って言ってくれてたんだけど。始業式だし、学校行って貰ったわ。」 「・・・・そっか。うんわかった、明日お礼ちゃんと言っておくよ。」 何だか拍子抜けしている自分が、おかしかった。 「それじゃ、水分だけちゃんと取って、ゆっくり寝てなさいね。」 こくりと頷いたツナの頭にひんやりとしたタオルを置いて、奈々はランボを連れてツナの部屋を出た。 ランボはここで遊ぶーと喚いていたが。いっしょにアイス食べましょうかランボちゃん、という奈々の誘いであっさりと部屋を出た。さすが、ランボの扱いに手馴れている。 とんとんとん、と階段を降りる音が聞こえる。 ベッドに寝転がりながら、ツナは両手で目を塞いだ。 何であそこで山本の名前が出てこないだけで、こんなにも驚いてしまうんだろう。 いつからこんな風になってしまったんだ。 いつもいつも、自分を助けてくれるからって、それが当たり前のように思えて。 「・・・・おれ、おかしいんだ・・・・・・・。」 あの掌の熱さも、火に照らされた顔も、線香花火の瞬きも。 誤魔化せないことぐらい、わかっていたのに。 いつも通りの山本に、安心して、甘えてばかりで。 当たり前なようなそれが、なくなるだけで、こんなにも焦っていて。 ゆらゆらする。こんな気持ち、知らない。
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