最後の夏休み

　「なーツナ、この後、プールいかね？」

　「プール？」

　「そ。プール。」

　ちょうど学校にいるしさ。そう言ってきたのは山本だ。

　くしくも中学最後の夏休みの、最終日。

　何が悲しゅうて補講を受けなくてはならないのか。と悔やんだものの、まず悔やむべきは自分の 頭の出来なのだろう、と、一学期末のテストの点数を思い返しツナは少し切なくなる。
　これさえ終われば今日の補習が終わるのがせめてもの救いかと、じりじりと熱い日差しの中でシ ャーペンも溶けるんじゃないかと思いながらも汗で少し皺の寄ったプリントと格闘していた所だ。

　「折角の夏休みが、殆ど補習だっただろ？受験だかなんだかしんねーけどよ。最後の休みぐらい 、夏休み堪能しよーぜ。」
　にか、と笑った山本の額にも、汗が流れている。
　なるほど、確かにこの暑さだ。思いっきり水に浸かりたい。
　「そだねー。いいかも。」
　まっしろなプリントをぼーっと眺めつつ、ツナは同意を示した。

　皆遊んでるだろうってのに、俺らだけこんなとこに閉じ込められてプリントやらされて休みが終わ ったとなっちゃあ、せつな過ぎる。



　「・・・・まあ、このプリントが無事終わったら、の話だけどな。」
　「・・・・・ほんとにねー。」


　はあ。と、二人溜息一つ。

　こんな暑い中で脳みそがまともに回るとでも思っているのだろうか教師陣は。
　普段でさえろくに活動していない脳みそだってのに！




　じりじりじりじり

　・・・・・暑い。

　「やまもとー。どこまでいった？」
　「問１ー。」
　「って、全く進んでないってことじゃん。」
　「ツナは？」
　「・・・・俺もだけどさ。」



　じりじりじりじりじり

　・・・・・・・・・・あっつい・・・・。

　「やまもと・・・どこまでいった？」
　「・・・・・問１。」
　「・・・・・・・・・俺も・・・・。」





　じりじりじりじりじりじりじりじり

　・・・・・・・・・・あ・・・っつ・・・・！！


　「あー！！！！気ぃ狂うよー！」

　ばん！と机の上でツナは頭を抱えた。動くと余計暑くなった気がする。溶け死ぬ。

　「マジでなー・・。」
　「もうダメ。字が象形文字に見えてきた。」
　「あーそれわかるわ。・・・・・・・・なぁ。」
　「んー？」
　机に突っ伏していた顔を上げ、ツナは山本を見た。

　にっ、と、楽しそうに笑う顔があって。


　「頭冷やして来ようぜ。」


　

　
　
　


　ガラガラと、教師は二人がいる教室のドアを開けた。
　「どーだー？終わるかー？」

　ひょいと顔を出したそこには、誰も居ない。

　「・・・ん？」
　教室間違えたか？と扉に戻りクラスを確認するも、確かに彼らがいた筈の3-Aだ。
　「・・・・？？」
　あいつらどこ行った？と思いながらも、ふと、プリントが教卓に置いてあるのに気付き、教師はつ かつかと教卓へ向かう。

　そこには。

　「あいつら・・・ふざけやがって・・・・！！！！！」

　どこサボりにいきやがったー！！！！
　山本ー！沢田ー！お前ら卒業も危ういってことわかってんのかー！



　
　叫ぶ声は、誰もいない教室に、良く響いた。




　『俺らしゅーしょく決まってるんで、先生今日は勘弁して。』
　
　　

　プリントの上にデカデカと書かれた文字に、せめて就職ぐらい漢字で書けと、その教師は思った。

　そうだってこれは最後の夏休みで。

　こんな風に、二人、過ごせる日は。
　

　
　きっと、もう、来ない。 　 　 　 　 　
　

８０２７祭り万歳！
てことで参加させていただきました。沙柳と申します。
どのお題も妄想膨らみますねぇ。
野愛さん頑張ってください！
・・・・これなぜかラブじゃなくなってしまったので・・・また、参加させていただくかもしれません（汗）


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いらないコメント>>

もー、だ　い　す　き　・・！（いきなり告白）
これを頂いたときにも言いましたが、私こういう山ツナ大好きなんです！
『俺らしゅーしょく決まってるんで、先生今日は勘弁して。』 ってところが個人的に大変ツボですｖ
ちくしょう！そんなこと書かれた日にゃ、私はどうしたらいいのか！（関係ない）
最後の意味深な一文が気になります。二人はまた一緒なのか別々なのか。
何年後も一緒にいてほしい野愛さんとしては、また一緒の場所にいるに一万票！（ヲイ）
何度参加して頂いてもいいですよｖ山ツナらしいかわいい山ツナ、ありがとうございました!!　（野愛）


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山ツナにルウソに、本当に趣味が合うんだぜ！（と野愛が勝手に思っているだけ）