あぁ、これは一体どこから突っ込めばいいんだろう・・・。

目の前に広がる光景を見て、黒川花は盛大な溜め息をついた。







添い寝






それはたまたま偶然だった。

日曜日、京子が一緒に買い物に行こうって言って、ちょうどあたしもこないだ雑誌でチェックしたパンプスが欲しくて。

買い物に行く前に、京子がビアンキさんに渡したいものがあるからって、ちょっと沢田の家に寄った。

沢田の家は玄関を開けた瞬間から騒がしくて、大嫌いな子どもがいちにさんびき。と、やけにニヒルな赤ん坊。

玄関には沢田の靴より少し大きめの靴が並んで置いてあって、沢田の母親が昨日山本くんが泊まりにきてくれたのよ〜なんてうれしそうに笑った。どうでもいいけど、いつ見ても沢田はこの年齢不詳な母親にそっくりだ。沢田って女顔なのか。

京子はよくここへ来ているみたいで、沢田の母親やビアンキと呼ばれる女の人と楽しげに話し始めた。

なんだか話が長くなりそう。買い物なんていつでも行けるし別にいいんだけど。

でもここにいるのは耐えられない。ガキがうざすぎる。

そう思って、沢田がいるであろう二階へ上がった。休日にあいつらに会いたいわけじゃないけれど、ガキの相手をしているよりはマシだ。



一応礼儀としてノックを二回。でも中からの反応はなにもなかった。というか、やけに静かだ。

・・・もしかして、あいつらまだ寝てんの?もう11時回ってるっつーの。どんだけぐうたらなんだよ。

だからちょっとイタズラ半分で起こしてやろうと思った。

静かにドアを開けて中へ入ると、ベッドの横にきちんと来客用の布団が敷いてあるのに、そこには誰も寝ていなかった。

・・・・?山本、さっきあそこにいたか・・・?

そう思ってちらりとベッドを視界に入れると、山本らしき黒髪の頭が見えた。

じゃあ、沢田は・・・?

ゆっくりベッドに近づく。なぜか寝息が二つも聞こえる。



「・・・・・え?」



その光景を見た瞬間、思わず変な声が出てしまった。

そこにはありえない光景が広がっていた。

壁側に沢田が寝ていて、反対側に山本が寝ていて。あろうことか、沢田は山本の腕の中。お互い服を着ているのが唯一の救いか。

なにこいつら。もしかしてそういう関係なの?

「・・つなぁー・・」

「ぅぷ・・っ」

山本、沢田潰れるから!ってそこ突っ込むとこじゃねーよ!

思わず柄にもなく動揺してしまった。

仮にそういう関係だったとして、これは許されてるの?なに?親も公認だったりするわけ?

「・・ん・・っ」

じっと見つめていたら、目を覚ました沢田と目が合った。見つめ合うこと数秒。

「・・・な、・・・ななななんで黒川がいるんだよっ!!?」

がばりと沢田が起きた反動で、隣の山本も目を覚ます。

「・・んー・・?どした?ツナ・・」

ゆっくり体を起こして眠そうにあくびをしながら振り向く。寝起きの顔も整ってるとか、それは人としてどーなの?

「おー、黒川。おはよー」

いや、そのリアクションもどうだよ。

「・・・つーか、なんであんたたち一緒のベッドで寝てんの?」

「さぁ、なぜでしょう?」

おまえのその笑顔はうそくさいんだよ。

「あんた、・・ケンカ売ってる?」

「ち、違くて、黒川・・っ、これは・・っ」

「あんた一人でわたわたしてても、バレバレだよ」

「だから、違・・っ」

「あんたたちが付き合ってよーがどうでもいいけど、・・とりあえずこの部屋、どうにかしたら?」

床に脱ぎ散らかした服だとか、ごみ箱の中の大量のティッシュだとか。あと、ズボンくらい履け。



「・・愛しの京子ちゃんに誤解されたくなかったらな」



にやりと笑ってやると、沢田はみるみるうちに赤くなって口をパクパクさせた。

「な、なんで、京子ちゃん・・?」

「さぁ?なぜでしょう?」

「花ー?ツナくんの部屋にいるのー?」

まぁいろいろ突っ込みたいことはあるけれど、なんか沢田パニクってておもしろいし、明日学校でこってり絞ってやるわ。







・・・・・・・・・・なんだこれ。(おい)
2007.05.19
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