「たけしじゃーんv」

「なに?寝坊ー?」

おーおー、今日も朝からハーレム状態だな。

「いいよなぁ、山本は女よりどりみどりで」

「・・・あんた知んないの?あいつきもいぐらい一途だよ」

隣で携帯をいじっていた黒川がそんな言葉を吐き捨てた。







周りから見て






黒川は山本と中学の時から一緒だと聞いた。だから山本のことは黒川に聞けという噂がどこかから立って、今では山本に気のある女が黒川に群がることが多くなった。本人は、うざいからマジでやめてほしいらしいのだが。

「え、うっそ。あいつ本命いんの!?」

「いるよ。つか気づけよ」

「だってあいつ、女のニオイっつーの?全然しねーじゃん」

「ああ・・、女のニオイなー・・」

そこで黒川は言葉を濁したように答えた。なにか言っちゃいけないことでも言ったのだろうか。

「おはよーさん」

「おはよーさん、じゃねーよ。あんたただでさえ単位やばいのに」

「そうだっけ?」

あはは、と爽やかに笑う山本は、学校に来る前にコンビニに寄って来たのだろうか、ガサッ、とコンビニの袋を机の上に置いた。

「黒川!ちょっと聞いてよ!」

ずい、と突然出てきたのは、こちらも黒川同様山本と中学から一緒の沢田綱吉。

てかいっつも山本と一緒にいるよな、沢田。こいつらそんなに仲いーのか?

「あ?もう聞き飽きたって。あんたらの痴話ゲンカは」

「ち、・・っ!?」

痴話ゲンカって。恋人同士じゃあるまいし・・・って、ん?これは・・・・・

「やまもとぉー、なに買ってんだよー」

袋の中に入っていたのは、俗にゆう避妊用具というやつで。

「!!?わーーーっ!!だめーっ!!!」

なぜか沢田が飛び出してきた。

「なんだー、おまえちゃんと女いんじゃん」

それをするりと交わす。

「・・・・あんた、コンビニでなに買ってんの?てかうちの制服で、んなもん買うなよ」

「ん?だって切れたし」

「切れたって・・、おまえいつから彼女いたん?」

そんな素振りは一度も・・・、

「いつって、中二だっけ?」

なぜそこで沢田に聞くんだ。沢田の知ってる奴か?

「てことは、3年目?すげ。」

さっき黒川の言っていた「きもいくらい一途」だというのは、どうやら本当らしい。

「どんな子!?どんな子!?」

「どんなって、」





「さーわーだー、お呼び出しー」





そこで教室の出入口の方からクラスメイトの声が聞こえた。

「あっ、」

「ツナ」

「?」

「ちゃんと断ってくんだぞ?」

「わかってるよ。ちゃんと言う」

「そんでなんかあったら、俺を呼べ?」

「うん」

「よし。」

そんなやりとりを終えて、沢田は教室を出て行った。そういや沢田ってモテんだっけ。てか山本、親バカっぽいぞ、それ。

「・・・・あんた、ホントにきもいね」

黒川は、はあ、とうんざりしたような顔をした。

「そっか?」

「てか!どんな子!?」

俺は沢田の告白より、山本の女の方が気になる。このモテ王が惚れる女ってのはどんな奴なのか。

「んー?ちっこくてかわいい」

「そうなん?相手何センチ?」

「160にはまだいってなかったよーな・・・。俺と20センチくらい差があるかな」

「ふーん。じゃあ、山本の顎下くらいか。他には!?」

「色素薄くてさ、髪の毛ふわふわしてやわっこいんだよなー」

髪の毛ふわふわ?天パか?

「目がぱっちりしてて、実は睫毛とか超なげーの。ほっぺもふにふにだし」

俺の頭に、こないだ見た黒川の親友が浮かんだ。

「・・・・あんた、惚気ると完全にきもくなるよね」

「わかった!山本の彼女って、黒川の親友の・・・えっと、あの子だろ!?」

「笹川?」

「そーそー!」

確か中学一緒だったって聞いたし、山本の話を総合するとなんか美少女っぽいし。結構自信あるぞ。

「「ちげーよ」」

結構自信のあった俺の回答は、目の前の二人によってあっさりと否定された。

「うっそ、結構自信あったんだけどなー・・」

「あんたもうちょっと世の中の視野広げな。あと、今まで生きてきた中での固定観念を捨てろ」

「なにそれ。てか、何気にひでーこと言ってね・・?」

黒川の毒舌にぐさりと心臓をやられた。

「京子はこんなきもい奴、相手にしないっての」

黒川、山本にそこまできもいって言えるのおまえくらいだぞ?

「えー・・、そうかー?」

この山本を相手にしない女が、黒川以外にいるのか。

「小さくてかわいいんだろ?そんで、色素薄くて髪の毛ふわふわで、目がぱっちりしてて・・・」

「・・・最終ヒント。同じクラスであんたもよぉーく知ってる奴だよ」

なかなか答えを出さない俺に見かねた黒川が最終ヒントをくれた。

「んん?」

「ここまで言ってわかんないとか、あんた鈍すぎ」

「今までの話を総合すると、山本より背が小さくて色素薄くて、山本と同中で同じクラス・・・だろ?」

「そーそー」

いつの間にか山本も、彼女当てクイズを楽しんでいた。

「・・・・ん?ちょっと待て・・・」

同じクラスで山本と同中の奴って、黒川と獄寺とそれから・・・・・・

「・・・も、もしかして・・・・」

いや〜な予感が頭の中をよぎる。





「・・さ、・・沢田とかって・・・言わない、よな・・・?」





「ビンゴ。」「お、あたり!」





黒川と山本の声がハモった。

「えええぇぇぇぇぇええぇぇぇーーーーーっっ!!?」

クラス中に、いや学校中に俺の声が響いた気がした。

「ちょ、待っ・・、おま、沢田って男だぞ!?」

「知ってるよ?」

そりゃまぁ、沢田ってどっか中性的な顔してるし童顔だし、かわいくないって言ったら嘘になるけれども。それでも、胸はないしそれに俺たちと同じモンが付いてんだぞ?

「おまえ・・・ホモ・・なん・・・?」

「ん、ツナしか勃たねーけど」

今さらりとすごいことゆったよ!しかも爽やかに!!

「・・・え、じゃあ・・・これ、は・・?」

聞きたくなかったけど目についた。さっき見た避妊用具を。

「だってツナ、すぐ腹壊しちまうからさ」

ちょ、山本と沢田ってそーゆー関係!?大人の階段を上っちゃってるの!?

「あ、女子ってみんなそうなん?」

「は?知るか」

「え、黒川ってしょ、」

「つうか、女はそれつけてもらわねーと妊娠すんだよ」

「あ、そっか。俺はてっきり、」

「おまえまじで一回死ね。」

ダメだ、どうしよう・・・。山本と黒川が違う世界の人間に見える・・・。





「やまもとぉ」





そこへ山本の彼女、いや彼氏・・・沢田には"彼女"って方がしっくりする気がするな・・・。ってそんなんどーでもいいよ!

とりあえず俺の頭は今大混乱だ。

「お、ツナ。ちゃんと断ってきたか?」

「うん。断ったのは断ったんだけど・・、」

「どうした?なんかされたか?」

「ううん。ちゃんと付き合ってる人がいますって言ったのに、それでもいいからって・・・あまりにもしつこいから逃げてきた」

「・・・相手、誰?」

「2年?かな?確かスズキって、」

「鈴木先輩はしつこいってゆうめい」

「え!?そうなの!?」

「そのスズキ先輩っての、何組?」

「あんた顔こわいよ・・・」



「ちょ、ちょちょちょ・・っ!」



「「あ?」」

ハモる山本と黒川。てか山本、ちょっとおまえなんか恐い。

「どうかした?」

首を傾げる沢田は、よく見たらかわいいけれども・・・・・・・

「・・・おまえ、・・・男、なんだよなぁ・・・?」

「そう、だけど・・?」

平均的な高校一年生よりは幼い顔立ちで、確かに先輩方がかわいいかわいいと言ってる理由がわからなくもないけれども。

「沢田はそれでいいのか?」

「な、にが・・?」

いいのか!?そりゃ山本は男前でめちゃくちゃモテる奴だけど!いいのか!?それでいいのか!?

「???」

「わり。ツナ返してくんね?」

「あ、あぁ・・・」

「ツナ、スズキとかいう先輩んとこ行くぞ」

「え!?なんで!?」

「俺がはっきり言ってやる」

「え、あ、山本っ!?」

そう言って山本は沢田を引っ張って教室を出て行った。





「・・・・なぁ、黒川」

「あん?」

「・・・俺、間違ってないよな・・・?」

「・・・あいつら周りが見えてないからね」

特にきも山の方ね、と付け足して黒川はまた携帯をぱちんと開いた。





ねぇ神様、俺は間違ってませんよね?





山本が置き忘れたコンドームを、しばらくの間見つめていた。






おまけ
うわ、第三者目線むっちゃ楽しい。
2007.08.01


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