2 背伸び



「・・・ホントにへーき?」

「へーきへーき」

からっ、と笑う山本に、それでもやっぱりツナは少し不安になる。授業を一度サボったとはいえそれも初めてのことだったし、学校をサボることなんかズル休み以外やったことがなかったからだ。

笑って山本は近くにあったゲームセンターへ入る。ツナは内心不安だったけれど、山本と一緒なら平気かもしれないと妙な安心感もあったので、山本のあとをついて行くことにした。

平日だったけれど、制服を着た人間もちらほらいる。どれも高校生だろう、少しだけ雰囲気が大人っぽいから。

最初こそ、挙動不審に周りをキョロキョロとしているだけだったが、そのうち慣れてきたのか、ツナも学校をサボっていることを楽しむようになった。




プリクラを一枚撮った。男子禁制と書かれていたけれど、店員の隙を見てこっそり入った。バレるかとヒヤヒヤしたが、「ツナがいるから大丈夫だって!」となんだかよくわからない理由を並べられた。聞かないフリをしておいた。

UFOキャッチャーでぬいぐるみを二つ取った。俺はやっぱりいくらやってもダメだったけれど、なんでもそつなくこなす山本が二つも取ってくれた。「ツナにやるよ」って一つもらった。おそろいのものってなんだか親友っぽくていいなと思った。

ゲームをいくつかやった。やっぱり山本はなんでもうまくこなしていたけれど、俺はずっとゲームばかりしていたから結構いい勝負だった。カーレースのゲームは惨敗だったけれど。




「ちょっと休憩すっか」

「うん、そうだね」

一通り遊んだツナと山本は、近くにあったベンチに腰を下ろした。

「疲れた?」

「ううん、全然!楽しいよ!」

「そか」

ツナの返事に、山本は安心したように笑った。

学校はサボってしまったけれど、正直あとのことを考えると後悔がまったくないとは言い切れないけれど、今この時間はたとえようがないくらいに楽しかった。







けれどやっぱり。







「おまえら学校サボってなにやってんだ!」

結局そのあとバレてしまって、やっぱり先生からは大目玉を食らってしまったわけだけれど。



「また怒られちまったなー」

担任によってこってり絞られたあと、職員室を出た山本は、はは、と笑った。

「うん・・」

「ごめんな?俺のせいで」

「ううん!先生には怒られたけど、でもこんなの俺初めてだったし!すっごく楽しかった!」

「そっか?」

「うん!」

続けて、ありがとう、と笑ったツナに、山本もうれしくなってつられて笑う。

「んじゃ、さっさとこれ片付けるか」

「うん!」

お互い初めての反省文には頭を悩ませることになるのだけれど、それでさえもかけがえのない大切な時間で。

これからもずっとずっと、山本と一緒にこの大切で楽しい時間が続けばいいと思った。











ツナにとって、「学校をサボる」=「背伸び」ってことで。
ダメですかっ!?
2007.04.13
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