放課後、誰もいない教室はひどく静かだった。

ぽつん、と席に座って教室を見回すと、いつものあのにぎやかな世界がうそのようで。

まるで、世界が俺ひとりになってしまったような、そんな錯覚に陥った。







泣きたくなるぐらい






窓の外を覗けば、グラウンドで野球部の部員たちが練習に励んでいる。

数えるのも面倒になるくらい、たくさんの部員たちがいるというのに、その中からたった一人の彼をすぐに見つけられるようになったのは、いつからだっただろうか。



ボールをひろう、山本。

ボールを投げる、山本。

バットを握る、山本。

バットをふる、山本。

ホームランを打つ、山本。



俺の瞳にうつる彼は、いつもかっこいい。



野球部のせんぱいに肩を組まれる、山本。

野球部のこうはいにハイタッチをする、山本。

野球部のかんとくにほめられる、山本。

フェンスの向こうの応援に、笑顔で応える、山本。

俺の心はいつも、醜い感情がうずまいている。



そんな笑顔を、俺じゃない他の誰かに向けないで。







またそんなことを思って、あわてて視線を目の前のプリントに戻した。







山本と話していると、胸がぽかぽかとあったかくなる。

山本の笑顔を見ると、胸がざわざわとさわがしくなる。

山本に触れられると、胸がどきどきとばくはつしそうになる。



いつから?山本にそんな感情を抱くようになったのは。



山本が誰かと話しているのを見ると、胸がちくりといたくなる。

山本が誰かに笑顔を向けると、胸がぎゅうっとくるしくなる。

山本が誰かに触れるのを見ると、胸がどくどくと変なおとをたてる。





やめて。さわらないで。その手は俺の、





いつから?山本の周りにいる誰かにそんな感情を抱くようになったのは。

友達だよって。親友だなって。笑ってくれた山本をそんな目で見るようになってしまったのは。











いったいいつから?











こんな俺の心を知ってしまったら、山本は俺のこときらいになるかな?きもちわるいって思うかな?

ツナなんかともだちじゃないって言われちゃうかな?

そんなのいやだよ。山本がいなくなったら俺は、









こんな感情、しんじゃえばいいんだ。









「お、ツナ。今かえり?」

「・・やまもと・・・」

「ちょっと待っててな、俺も今帰るとこだから。一緒に帰ろーぜ」



あぁまた俺は、あの笑顔をひとりじめしたいって思った。

バカツナ。山本は大切なしんゆうなのに。そんなこと思っちゃダメなんだ。

だけど、そう思えば思うほどこの醜い感情はどんどん大きくなって。もうすぐ容量オーバーで爆発しちゃう。







助けて、山本。苦しいよ。







「ツナ!」







くるしくてくるしくて、泣きたくなるくらい山本がすきなんだ。







ツナ→山本になると、なんでこんな暗くなるんでしょうね?(聞くな)
2007.05.19
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