空はどこまでも続いてると聞いたことがあるけれど、この空をあの人も見ているんだろうか。

夜空を見上げていたら、涙が零れた。







ひびわれ






「もう、一緒にいられないんだ・・・・」

ぽつり、呟いた声は山本の耳に大きく響いた。

「・・今・・、なんて・・?」

「・・一緒に、・・もう山本とは一緒に、いられない・・」

最初にそう告げたのは、中学生活三年目の夏。

志望校を決めなきゃいけなくて、山本が、「ツナはどーすんだ?」って聞いてきたから。

その時にはもう、俺の気持ちは決まっていた。



イタリアへ行く。



「なんで・・?」

「高校へは行かない」

「高校、行かなくても会えんじゃねーの・・?」

「会えないよ。・・だって、並盛には・・日本を、離れるから」

「どーして・・?」

尋ねる山本の声が震えているのがわかった。

「どうしてって・・、もう、決めたから・・」

「もう決めたって・・、」

あまりにも山本がしつこいから思わず。





「もう決めたって言ってるだろ!」





思わず大声を。





「・・あ・・」





上げてしまった。













あの時の俺は、なんて子供だったんだろうと。













あれ以来なんだかぎこちなくなって、けれど山本は変わらず優しくて。

「ツナ」

それがどうしようもなく、俺をイライラさせた。

「イタリア、行くんだろ?」

「そうだよ」

何回も同じこと聞くなよ。

「じゃあ、・・俺も連れてってくんね?」

「え・・?」

「獄寺も行くんだろ?ヒバリも笹川のお兄さんも。・・俺だけ仲間外れってひどくね?」

予想はしてたけど、まさか本当に聞いてくるなんて。

「だ、ダメだよ!山本にはちゃんとした進路が決まってるんだから!」

高校だって推薦で、実家はお寿司屋で、こんなにも将来を約束されてるんだよ?

「俺、ツナといてーもん」

「だめ!」

山本だけは、最後まで普通の友達で。

「いやだ。」

「連れてけない!」

山本に、あんな危険な場所へは。

「・・俺、ちゃんとわかってんだぜ?それでもダメなの?」

「・・・・・・・・・・」

「・・野球、一生出来なくてもいい。それでもダメなの?」

ダメだよ、そんなの。ダメに決まってるじゃないか。





「俺は、・・ツナと一緒にいたい」





つ、とツナの瞳から涙が零れた。

「・・ツナ、」

どうしてそんなに。




「・・っ、触るな!」




大声で叫んで、ツナは山本の前から逃げるように去った。

あの手に触れてしまったら、もう離れたくなくなってしまうから。













バカだなぁ。あの時もっと素直に、「だけど忘れないで」って言えていれば。

そうすればこんな気持ちにならずに済んだのに。













それからはずっと、わざと嫌な奴を演じた。

嫌われたくて、忘れてほしくて。

けれどやっぱり山本は。

「ツナ、」

優しい声で。

「卒業おめでとう」

いつもの笑顔で。







「また、会おうな」







「・・いいんすか?10代目」

「山本には、ちゃんとさよならって・・言ったから」

鼻の奥が、つん、と痛くなった。

「・・なら、行くぞ」

目頭が、熱くなった。













情けない。

こんなことなら、もっと素直に。













空はどこまでも続いてると聞いたことがあるけれど、この空をあの人も見ているんだろうか。

「・・胸が、痛いよ・・」

もしまたいつか会えたなら。

「・・いたい・・っ」





今ならありがとうって、いつもの笑顔で言えるから。





「・・っく、・・やまもと、ぉ・・っ」

笑顔のあの人が、夜空に浮かんだ。







悲恋でごめんなさい。
2007.02.27


presenter by 創天様
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