身長 156センチ。

あぁ・・テレビでやっていた背を伸ばす裏ワザも、結局効果がなかったのか・・・。

ツナは溜め息と一緒に、がくり、肩を落とした。







バ ニ ラ






156だって別に、極端に低いわけじゃない。テレビに出ている芸能人だって、自分より背の低い男の人は何人か知っている。それに、小学校の頃と比べたら、随分と大きくなった。

けれど、周りの女子とさして目線が変わらないというのが、思春期中の男の子としてちょっぴり哀しくなってしまうのだ。

女子からも「ダメツナ」と呼ばれてしまうのは、きっとこの典型的なもやしっ子体型にあるのかもしれない、と今さら思った。



「ツナは156センチかー」



「へっ!?」

突然頭上から声がして顔を上げると、自分よりちょうど頭一つ分大きな少年が、うしろからツナの身体測定結果を覗き込んでいた。

「や、山本!」

まるで女の子がするみたいに、ツナは咄嗟にそれを胸に隠した。

「かわいいのな、ツナは」

爽やかな笑顔でそう言われ、きっと自分が女の子だったら一発で落ちただろうなと思った。

「か、かわいいとか言われてもうれしくないし!」

たった今身長のことで落ち込んでいたというのに、そんなことを言われても逆にショックなだけだ。

「そうかー?」

ちらり、気になって山本の身体測定結果を覗き込んだ。その友人とは身長差があり過ぎるため、ちょっと背伸びをしなければ覗き込めない位置にあったのだが。



身長 177センチ。



「う、わ・・!山本おっきいね・・!」

周りと比べて大きいと思ってはいたが、まさかここまでとは。思わず感嘆の声が漏れた。

ついでなので、体重やら胸囲やら座高やらも見た。すべて自分とかなりの差があって、正直見るんじゃなかったと少しだけ後悔した。

そりゃこんだけ男らしい体つきしてたらモテるわけだよ。

またツナは哀しくなってきたのか溜め息を漏らす。

「どうした?」

「や、俺と20センチも違うなーと思って」

あぁ・・どうして世の中こんなに不平等なんだろう。俺だって立派な男なのに。

「でもさ、20センチって俺的に一番いい身長差だと思うけど」

「?」





「ほら。こーやったらすっぽり収まる」





なにを思ったのか、山本はツナを言葉どおりすっぽり胸の中へ閉じ込める。

「は!?な、なにやってんの!?山本っ!!」

山本は特に気にしていなかったが、周りから、なにやってんだよ山本ー、とか、胸の中のツナがじたばたと暴れ出したのですぐにツナを解放してやる。

すぐに解放してもらえたので、ほっ、と一息ついたツナを見てもう一度閉じ込めてやろうかと思ったが、あんまりやると嫌われるかもしれないと思ったのでやめておいた。こういうのは引き際が肝心だ。

「山本って昔から大きかったの?」

「んんー?どうだろーな。でも背伸び始めたのは小学校の終わりごろかな」

「どうやったらそんなに大きくなれるの?」

「なに?そんな伸ばしたいの?身長」

「そりゃ・・!男だし・・・、一応」

ツナは今のままで十分だけど、と思ったけれど随分気にしている様子がうかがえたので言葉にするのはやめておいた。

「んー、じゃあさ、牛乳飲めば?すげーありきたりだけど」

「牛乳かぁ・・・」

そういえば山本はいつも牛乳を飲んでいるイメージがある。牛乳を飲んだら大きくなれるという話は本当だったのか。

「でも俺あんまり好きじゃないんだよね」

あぁ・・だから身長が伸びないのか、と今さら納得した。

「牛乳きらいかぁ・・・」

「うん・・・」

「ま、でも成長期だし?伸びんじゃね?」

「そうかなぁ。伸びるんだったら俺、山本みたいに大きくなりたいな」

「・・・・いや、それは困る」

「?なんか言った?」

「いーや」





今が一番ベストな身長差だと思っている山本と。

早く20センチの差を埋めたいツナと。





「あ、そういや俺、ずっと気になってたんだよな」

「なにが?」

「獄寺の身長。」

「獄寺くん?」

「あいつ172とか言ってなかったっけ?」

「うん。獄寺くんも大きいよねー」

「よし、見に行こうぜ、ツナ」

「えっ!?」





さて、この身長差はこれからどう変わるのか。





「ごーくでらー、身長何センチー?」

「ゲッ!山本・・!」





二人の成長期はまだまだ始まったばかり。







どこらへんがお題の「バニラ」なんだとか、そんなツッコミはいらない。
2007.05.02
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