Sunday AM 7:30  竹寿司






「一人で大丈夫か?ツナ。家まで送ろっか?」

山本の実家である竹寿司の扉の前で、山本は心配そうにそう聞いた。

「大丈夫、だよ。一人で、帰れる」

次の日の朝、昨夜から降り続いていた雨はあがっていた。

まだ制服と靴は完全に乾いてはいなかったが、明日は学校もあるしいったん家に帰った方がいいだろうという結論に至って、ツナは山本の大きな服とサンダルを借りて家に帰ることにした。

別に今日も休みなんだからゆっくりしていけばいいのだが、なんだか今さら恥ずかしくなってきたので早々に帰ることにしたのだった。

「そっか。じゃあ気をつけてな?」

「うん」

妙に照れくさくて山本と目が合わせられない。ツナは俯き加減のまま頷くと、くるりと山本に背を向けて扉に手をかけた。



「・・ツナ、」



呼ばれて顔を上げたのと同時に、山本に唇を塞がれる。

「ん・・っ」

まるで別れを惜しむようなキスで、熱くて溶けそうになった。

「・・また明日な」

「・・・うん」





「ただいまー」





それとほぼ同時に裏口の扉が開いて、白い大きな発泡スチロールの箱を抱えた剛が入ってきた。

「お、親父っ!?」

あまりに突然の出来事に、思わず山本の声も裏返る。ツナは驚きのあまり、一瞬息が止まった。

「なんでぃ武、バケモノを見たような顔しやがって」

「わ、わりぃ・・。ちょっとびっくりして・・」

もしかして見られたか。山本は気が気じゃなかった。

「おぅツナくん、もう帰んのか?」

とん、と抱えていた発泡スチロールの箱をカウンターの上に置く。

「えっ、あ、と・・、はい」

見られていたらどうしようと、こちらもいつも以上に緊張している。

「そーかい。じゃあ武、送ってやんな」

「い、いや!大丈夫ですっ!一人で帰れますからっ!」

「そうか?」

「は、はい!えと・・、晩ご飯ありがとうございましたっ!」

おいしかったです!と付け足してぺこりとお辞儀をした。

「そーか。ツナくんにそー言ってもらえっと、おいちゃんうれしいなぁ」

心底うれしそうに笑う剛にツナもつられてうれしくなったが、これ以上ここにいるのは緊張するしなにより恥ずかしい。

「じゃ、じゃあ山本、また明日ねっ」

「お、おう」

「おじゃましましたっ!」

「気ぃつけてなー」

ツナはもう一度ぺこりとお辞儀をして、まるで逃げるように帰っていった。





「ん?もしかして邪魔しちまったか?」





「はっ!?」

ぼそりと呟いた剛の言葉に、山本は普段出さないような素っ頓狂な声を出してしまった。

「帰りの道が空いててなー、気ぃ利かしてもうちょっと遅く帰りゃよかったな」

わりぃな武、と笑って、剛は機嫌良く発泡スチロールの中の魚を眺めた。どうやらいい魚を仕入れることが出来たらしい。

わりぃツナ、なんか親父バレてるかも・・・。

山本は機嫌良く鼻歌なんか歌い出した父親に隠れて小さくため息をついた。








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山本父には二人の知らないところでバレてるといい。
2007.06.27
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